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サイバー遊民

日々遊んで暮らしたい。

救済できない人に胸が痛い

会社・仕事

こんにちは、Dai5です。

 
僕の会社では、毎週月曜日の朝に週末にあったことや感じたことを発表するシェアタイムというものがあります。
 
意識ばかりが高い尖ったベンチャー企業がやりそうなことだと思うかもしれませんが、まあ若者の多い会社なので、それをきっかけに談笑をしながらゆるーく週の仕事をはじめるというふわっふわな雰囲気を想像してくれると良いでしょう。僕はそんな会社の雰囲気が好きでした。
 
僕はだいたい為替のことか、ボクシングのことばかりです。チケットも買ってほしいので、ステルスでもなんでもない露骨極まる宣伝をします。今度の試合頑張りますので、よかったら見に来てください!たいて溌剌とした元気の良い宣伝文句で僕の発言は終わります。
 
今朝の社長の話は身内の訃報でした。
彼の身内が亡くなったのです。
 
その方はかなりの御高齢のようで、まさに息を引き取る瞬間に立ち会ったのだと社長は言いました。
はじめて人の命が消えていく瞬間をみた。必死に息をして、目で何かを訴えかけて生きようとするその姿に胸が痛くなるけど僕はどうしようもできない。命が尽きていくのをただ見ているだけだと、無力感を口にしました。
 
 
社長の出した使途不明金が、いよいよどうしようもない地点に来ているという話を聞いたのは、昼食も終わって眠けが訪れるころでした。
 
「ちょっと皆さんに聞いてほしいことがあります」

いつにない真剣な声色で、皆を振り向かせたのは社内でも内部事情に詳しい同僚です。社長が出掛けて間もなくのタイミングでした。そして同僚は神妙な面持ちと共に語り始めました。
 
約一年ほど前、社長が変な案件に投資してウン千万を騙し取られた事。プロの詐欺師で契約書などザルだらけでもう取り戻せないこと。その埋め合わせで現在取扱っている案件の一時預かり金に手つけたこと。その案件の担当者は詐欺案件を仲介してしまった人らしく、その責任を感じて分割でゆっくりと支払いをするという暗黙の了解を認めていたこと。その担当者が変わって、「なぜ分割で払っているんだ、はやくまとめて払ってください」という催促をされていること。暗黙の決して表ざたにはできない了解なので、それをうまく引き継ぐことができなかったこと。資金繰りにも上手くいっておらず、税金も払えていないので資金を引き入れることができなかったこと。税金と不足分を支払うためになんとか借り入れたウン千万は年利15%という暴利で借りていること。それでなんとか税金は払ったけれど、この先会社であげている利益を考えても払っていけないこと。また、成長しているように見えた会社は、個人の業績とは別に使途不明の固定費や謎の出金、返済金などで全く会社に保留されたり、個人に還元されていないこと。そのおかげで会社の借金は膨らみつつあるのではないかというほぼ確信的な疑惑と、その事を把握しているけれど、実際にどれだけ大変なことで、いつ資金が尽きてもおかしくないという状況を全く理解しておらず、「大丈夫、大丈夫」と前向きな姿勢を一切崩さない社長。実際にどれだけ借金が膨らんでいるのかも本人は理解していない模様。あとボーナスも昇給も今年は完全にないという絶望感。
 
 
まだ推測の域ですが、内部事情と経理に詳しい人に聞いたところ二月の給料は出るとして三月の給料まではたぶん持つだろうけど……という計算のようです。ちなみに会社を立て直すにはあと三ヶ月で4000万ほどの利益をあげなければなりません。そうしないと今期のズタズタな決算が出てしまい、どこからも資金を引っ張れなくなってしまうからです。奇跡的に良かった前期の決算書を拠り所にして資金を引っ張ってこようとしていますが、まあお察しの通りです。
 
 
これは傍目に見てもかなりまいった状況です。
 
しかし、それを社長に言ったところで、彼は現実を見えていないので大丈夫だと言い張るでしょう。そうです。彼はどこかの時点で完全にまいってしまっているのです。
半ば精神に負荷がかかりすぎているのではないかと思います。本当ならば説得してなんとか立ち直る方向や会社をいったん潰して再生する方法など、策を弄して助けたい。根はそこまで悪い人ではないのです。僕も友達として遊ぶ分には嫌いな人間ではありません。しかし、彼はそれを断固拒否し、人が周りからいなくなってしまうまで一人で踊り続けるでしょう。そしてまた上手い話をもちかけられて騙されるでしょう。彼は2年前にも詐欺被害にあい、その前には会社のお金で株をして大損をしているのです。これは、何か病気のような気がしてなりません。彼は上手い話にほいほいと乗って怪しい案件を引っ張ってきたり、変なセミナーに参加するのが恐ろしく得意なのです。どうしてそんなことにお金を使えるのか全く持って理解できません。どうしてそんな風になってしまったのか。
 
FXでもマイナスを抱えすぎると恐ろしくなってロングを切ってすぐロングみたいなわけのわからないことをするようになりますが、それにも似た精神状態なのでしょう。とにかく目先の怪しい利益でもなんでもお金お金お金。
そのために上手い話を嗅ぎ回る。
怪しいセミナーに顔を出す。
怪しい案件に引っかかる。
 
こうなってしまった人間はもはやギャンブル依存症のようなもので、投資したお金を回収するまで頑なに怪しいくじ引きを続ける負のスパイラルが待っています。そのくじの中には当たりなんてないのに。
 
しかし、社長と従業員という関係もありますし、そう頑なに全てを拒絶して暴走をする人間を僕達はとめることができません。本当はとめたい。現状に目を向けさせて、なんとか助けてあげたいという気持ちは社員一同皆いっぱいにあるのです。こういう一面意外では感謝したり、尊敬するべきところも持ち合わせているのです。
 
ただ、同僚も幾度か説得や言い合いをしてきましたが、それでも頑なに現実を見ようとはしません。それでやめていった人も多く、言い合いに疲れて「もう良いよ」と呆れと共に引き下がるという経験を誰もが一度は体験しています。
 
だから皆、救済することは諦めしまっています。
 
必死に息をして、目で何かを訴えかけて生きようとするその姿に胸が痛くなるけど僕はどうしようもできない。命が尽きていくのをただ見ているだけなのです。
 
彼の朝の発言同様、僕たちは彼が破産に向かって突き進んでいくのを胸の痛みと共に見守るしかありません。
そして逃げる準備も。