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【ボクシング】ボクシングで新人王予選の時の思い出【2試合目】

衝撃のデビュー戦2RKO負けから4ヶ月後、東日本新人王予選にエントリーしていた僕は2戦目の試合に出ることになった

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デビュー戦で僕の減量が余裕だったのと、体であたり負けているのを見たトレーナーは僕の階級をスーパーバンタム級に変更。55.3kgでの試合出場だった。

正直55.3kgって僕が小学校5年生くらいの時にそれくらいあったので、16か17年ぶりの体重になる。それに1度やせたリバウンドで体重は65キロまで増えていたので10キロ近い減量が待ち受けていた。

新人王予選という憧れ

新人王予選といえば「はじめの一歩」で幕之内一歩が衝撃的なKO劇で相手をバッタバタとぶっ倒してついには全日本新人王を獲得して日本ランク入りするという成り上りストーリーが有名で、みんな憧れを抱いている。

かくいう僕もその一人で、新人王になりたいと思っていたが、新人王を本気で目指していたかというとそうでもなく、とりあえず手っ取り早くトーナメントで試合が組めるためエントリーしたというのが本当のところだった。

早く勝って1勝目をあげないことには前回負けた心の傷は癒えないと本気で考えていた。とりあえず、目の前の一戦。それを一つ一つ勝ち上がっていき、あわよくば新人王になれればという考えだった。

辛すぎた減量

55.3kgの減量はこれまでにない苦しみだった。

1週間前に前回の57.1kgに一度入れてから、58kgのところでキープ。最後の三日はもちろん絶食し水を抜いて体をドライアウトさせていった。

何も食べていないので空腹で体力もない、階段をあがるだけで息切れがするし、それでも無理やり体を動かして汗を出す。喉もずっと渇いていて口の中は唾液もでないので、ずっとはりついている感覚がある。だんだんと生物的に死に近づいていく感覚があった。

最後はほとんど病人に近かった。実際にガリガリにやせこけていったので見た目も病人だった。

仕事もほどんと集中できない常態で、簡単な作業でさえも辛く感じた。残業をする余裕もなく会社にお願いして最後の一週間は定時であがらせてもらった。

そうして何とか体重を落として計量をクリアした。

計量が終わったとたん、500mlのペットボトルを空にした。水分を入れたとたん、汗が体中から吹き出た。水抜きで熱のこもった体を冷やそうとしたのかもしれない。

とにかく限界まで減量した。

そして試合へ

当日の体重は60.2kgまで戻った。

約5kgの戻り幅だ。

試合は2試合目だったと覚えている。リングチェックやバンテージをまき、アップをしたらすぐに1試合目が始まった。

1ラウンド目が終わると、後楽園ホールの入場口にまで上がっていき、待機する。

前回KOされたこともあって、嫌な思い出が脳裏から離れない。

でも、次こそ勝つ。しかし、またKOされたら・・・。そんな思考のループが止まらない。そうしているうちにも、前の試合は2ラウンド、3ラウンドと進んでいく。

覚悟を決める間もなく、前の試合は終わり、僕の名前が呼ばれる。

リングインだ。

横目にチケットを買ってくれて応援に来てくれた人が手を振っているのが見える。でも手を振って返す余裕はない。

僕のリングインの後に遅れて対戦相手がリングインする。

前回の相手と比べると小さい。そりゃそうだ、階級が下なんだから。でも1戦1敗の僕と2勝1敗の相手。相手は少なくとも経験は僕より上で、2勝もしている。

リング中央で対戦相手と向かい合う。

相手は目を伏せて合わそうともしない。僕は相手と審判と交互に視線が泳いだ。

コーナーに戻った後、コーナーマットに一度頭をもたれると、直後にゴングが鳴った。

リング中央に出て行き、相手と手を合わせる。

相手は僕よりも小さい。ステップを踏み、遠い距離からジャブを付く。

相手より僕のほうがジャブに関しては勝っていることがわかった。徹底したアウトボクシングで遠いところからジャブを出すと相手がやりずらそうにしているのがわかった。前回のような相手との距離感がまったくわからないみたいなことはなくなっていた。

ジャブで押し込んで相手がコーナーに寄りかかったところで左右の連打を浴びせた。ガードの上からだったが、とにかく必死に殴った。とたんトレーナーの声が聞こえた。

「まだ焦って打つな!」

そうしているうちに、1ラウンド目が終わった。

コーナーに戻ると、トレーナーが「よし、このラウンド取ったぞ!」と言った。

そして「まだ今は体力を使うな!いけるときになったら俺が指示するから!」とも。

2ラウンド目は、気持ちにとにかく余裕があった。

ジャブのフェイントや、右のカウンターという練習ではできていることがそのままできて調子よく2ラウンド目も取れた。

ところが3ラウンド目の後半になり、今まで軽快に動いていた足が急に動かなくなった。止まったところで押し込まれ、連打を浴びせられ、ポイントを取られた。

3ラウンド目が終わってコーナーに戻るとトレーナーから「とにかく足を動かせ、無難に逃げれば勝てる」という指示が入った。そう、1~2ラウンドを取って、3ラウンドの前半は僕がとっていたので3ラウンドはドローか落としたかの瀬戸際。4ラウンドをドローくらいにしてしまえば、僕のポイントアウトで勝ちという状況だった。

4ラウンドはとにかく逃げに徹した。

…はずだったのだが、どうしても足が動かない。相手のワンツーに対してバックステップをしたはずが、足が追いついていない。

このままだとやられると思い、反撃に出る。

…が攻撃に出た打ち終わりを狙われて、滅多打ちにされる。

息も上がり、クリンチでしのぎながらなんとか4ラウンド目を終える。

「なんで、逃げずに攻撃に行った!!」

コーナーに戻るとトレーナーの怒りの声が聞こえる。

勝ったかもと思ったが、採点が読み上げられ、結果はドロー。

優勢点のついた相手側がトーナメントでは残り、僕は敗退扱いになってしまった。

こうして、僕の新人応予選はあっけなく終わった。

2戦1敗1分

引き分けだったが、勝てた試合だっただけに、悔しさは前回よりも大きかった。

1勝して辞める予定だったが、まだ辞められそうにもなかった。

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